このブログはシリーズになっております。
すごい人、というのは
常人の常識をはるかに超えた決断をするようです。
またそれが驚くほど早いのです。
私のことは、ただの
「米国駐在員の妻」
という肩書きしかご存知ないはずなのに、
この雲の上のようなKさんがそこまで言ってくださるのは、
ものすごい驚きでした。
この時の私の顔はおそらくこんな顔↑してたと思います。(まだ20代)
しばらく私はあっけに取られながらも、
頭の中ではぐるぐる考えていました。
もちろん非常に光栄なお申し出です。
今まで一生懸命、なんとか方法はないかと探しあぐねて
やっと見つけたことが、思わぬチャンスに繋がったのです。
ただ、その一方で私は他のことも考えていました。
そもそも、ノースカロライナに工場を買うことを決定したのは、
私の両親だったのです。
1985年のプラザ合意の後、どんどん円高が進みました。
そのとき、日本の企業がこぞってアメリカ進出していきました。
前任者が5年の任期を終えて私たちは1991年に着任しました。
夫はナンバー2の立場でノースカロライナにいましたが、
社長の娘が子どもをつれてニューヨークへ行ってしまった
となっては、任期が終わった後、次の人選に困るでしょう。。
日本にいる社員に対しても示しがつきません。
ただのサラリーマンの奥さんならもっと自由がありました。
背負うものがありませんから。
しかし、私には、
会社の経営者一族としての立場があるのです。。。
ノースカロライナでの子育てがそんなに大変なら、
対処方法を次の社員に伝えて行く責任が私にはありました。
ノースカロライナに工場がある限り、主人がそこに着任している限り、
やはり、
私は逃げるわけにはいきませんでした。
私は深く一つ深呼吸をして、その思いをKさんに伝えました。。。
「そうですか。。。。」
しばらく沈黙が流れました。。
そんなに長い時間ではなかったかも知れません。
でも、とてつもなく長い時間のように感じられました。
〜私のちっぽけな責任感が娘の将来を台無しにしてないだろうか〜
〜本当にこれで私は後悔しないだろうか〜
そんな思いがぐるぐると頭を駆け巡っていました。
いつしか外は雪がしんしんと降り始めていました。
Kさんが口を開きました。
「度々ニューヨークにくることができるのなら、
普段は電話で指導できるかもしれません。
ただ、そのためには、淳子さんに理論から勉強してもらう必要があります。
そして、お嬢さんを
自分の子としてではなく、
指導の対象として客観的に観察する必要があります。
それが、あなたにはできるでしょうか??」
「具体的にどういうことになるんでしょうか?」
「つまり、、、今日からお嬢さんは
あなたのお子さんじゃないってことです。」
「ええええ?」
日に日に娘は育っていきます。
いつまでも方法を探してスタートが遅くなってはいけないとも思いました。
こうなったら、やるしかありません。
とにかく片っ端から試して行くって決めたことを思い出しました。
ダメなら他の方法を当たるまでです。
いつまでも決断ができないのも、
娘のためにならないと思いました。
不思議なもので覚悟が決まると、
私は静謐な空間にどっしりと腰を下ろしたような気がしました。
そして、その日から私は
新米セミリンガル矯正教師
として、Kさんに指導してもらいながら
娘のことばの指導に当たることになったのです。
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大川 淳子
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