ボーディングスクールは、普通ものすごいド田舎の治安のいい場所にあります。
これは、都会の雑踏から隔離して勉強に集中させることが目的です。
元々アメリカには、日本のように街の中心に高級住宅地はありません。都市の郊外で車がないと行けないようなところによい住宅地も学校もあるのが普通です。古くからの学校は近くに線路はありますが、4時間に1本というくらいの間隔でしか列車はこないようなところです。
そして、アメリカのアッパークラスの人々はこのティーンエイジャーの時代に親の富から子供を引きはなすことに意味があると思っています。
子供を贅沢に育てることが子供を堕落させ、子育てを失敗する一番の原因だということを、彼らは先祖代々よくわかっているのです。
(ちなみにティーンエイジャーとは、10代という意味ではなく、サーティーンからナインティーンまで、呼び方にティーンがつく間のことを言う。11才、12才は入らない。)
広い学校内で授業ごとに校舎と校舎を移動するのは生徒達です。雨にも雪にも負けずに短時間で移動するため、トイレに行く時間もぎりぎりあるかないかくらいです。たとえ嵐がきていて付近は停電でも、ボーディングスクールは自家発電装置があるため、授業は休みにはなりません。
先生も生徒も学校内に住んでいるので授業は成り立ちます。なので、生徒は皆、暴風雨の中を次の教室まで歩いて行くのです。
私も母と一緒に行ったペアレンツウイークエンドでこの台風に会いましたが、土砂降りの中を歩くのにギャーギャー言っているのは、アジア人の親だけだと言うことに気がつきました。白人の親達にとっては、おそらく自分たちもこのような環境で育って来たのでしょう、上下雨合羽を着て大騒ぎしている私たちを、チラ、と一瞥するだけで子供と一緒に黙々と300mは離れているであろう次の教室まで歩いて行ったのです。
名だたる富裕層の子息やロイヤルファミリーたちも、質素な部屋で暮らしています。洋服を掛けるクローゼットの幅は80cm位、トイレもシャワーも共同です。
さらに、毎年寮を引っ越さなければならず、一旦荷物は体育館のようなところに移動させなければなりません。
夏の間はサマースクールで他の生徒が寮を使うからです。
皇居の4倍はある広い校内を、車なしでやる荷物運びがとても大変で、皆、否応なく断捨離させられて、ムダな物は持たないという躾が自動的になされるシステムです。
それに、ホームステイではうやむやになりがちな、消灯時間、帰宅時間が厳格に守らされます。
たとえ校内でも、夜11時すぎに一歩でも寮から出たら、即刻退学になるくらい厳しいルールがあるのです。
この厳しい環境で勉学と部活にいそしむ、ということは、子供を甘やかせて育てて来た家族には到底耐えられない選択で、当然脱落者も出ます。
しかし、そもそも入学時のメンバーを全員卒業させようなどと学校側は思ってもいませんし、ある意味ふるい落としにかかっているわけですから泣き言は言ってはいられません。
こんな大変な学校なのに、脱落者による欠員を待っている、次年度の入学を狙うたくさんのウェイティングリストもあるのです。
TVドラマでよく見る、遊んでばかりのアメリカの高校生達とは一線を画する環境がボーディングスクールだと認識して頂けたらと思います。
大川 淳子
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